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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第13章 夏祭りと告白

あたしがこの時頭に浮かべているホテルっていうのは家族旅行で使うようなところで。


見たこともないお城みたいなホテルを目の前にしたとき、「わぁ」と声が漏れた。


フロントに並ぶ部屋の一覧。

誰もいない受付。


「ここって……あの、その、普通のホテルじゃない……?」


「ラブホ。一部屋空いてるけどどうする?」


「高校生って入れ・」


あたしの声を遮るように口元に一本指を立てる澄くん。


「しぃー。制服じゃなきゃ平気だよ」


澄くんは何でもよく知ってるね……。


経験値の向こうに姫芽先輩が見えるようで、もやっとしたものが胸にこみあげる。


「でもやめようか、やっぱ」


え……?
それは嫌……。


「行きたい……だめ、かな?」


墨色の浴衣をつまんで、澄くんを見上げる。


一部屋だけ光るパネルのあかりに照らされる彼の頬が、じわっと赤らんだ気がした。



「あ。うそ、ごめん……うそ」


あたしと居たいわけないじゃん。

……なんであたし、こうなんだろう。



そう後悔するあたしをもしかしたら優しい澄くんは見抜いてしまったのかもしれない。


「ううん。……いいよ、行こ」


あたしに付き合ってくれるなんて……。

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