テキストサイズ

放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第7章 初夏とカップケーキ

あたしはちらりと澄くんを見上げた。


澄くんも一瞬目を向けてくれた。


それからあたしの横をすりぬけていく間際。


「……危なかったね。触られなくってよかった」


誰にも聞こえないような小さな囁きが、鼓膜を震わす。


「……っ」


なにか言おうとしたときにはもう、背中は遠ざかっていて。


……澄くんの後ろ姿に手を伸ばしたいよ。


澄くんにとってのあたしって……一体、どんなものなんだろう。


「つーかセフレがさー」



同じ班の男子の会話がちょうど耳に入ってドキっとした。


……セフレ。


まさにあたしと澄くんの関係。


「お前セフレいんのかよ」

「いや誰しもいるだ、ろ……」



という男子の声が止まって、こっちと視線がばっちりあってしまって、あたしは目を泳がせる。


「ん? 姫路さんも話聞く?」


男子が首を傾げながら、両眉をあげてにっこりと歯をみせてわらった。


「えっ! いや……その」

「おいオメー姫路さんを毒すな。学年中の男子に殺されっぞ」

「だなぁー。この話はおしまい!」


あたしのせいで男子たちの話は途中で終わっちゃった……。


セフレが、なんだったんだろう……。


……セフレってすごく寂しい響きだな。



「はぁ……」


たまにため息をつきながら、かちゃかちゃとボールの中の粉と卵を混ぜ合わす。



「まーじで、姫路さんの色気がやばい」


「しぃ!声でけえんだよ!」


その声ではっとして顔を上げた。


「え?」


「あーほら!お前のせいで終わっちゃったじゃんか!」



班員の男子が隣の男子を肘で小突いている。


「えと……なにが終わったの?」



「色葉ちゃんったらため息ながら物憂げにかきまぜてたから、ちょっと雰囲気あったっていうか、綺麗だったんだよ。それをずーっと見てたの、あのバカ二人組」



同じ班の女子である佐原(さはら)さんに説明されて、男子を見ればへらっと笑われてしまって、顔が熱くなる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ