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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第7章 初夏とカップケーキ

授業も終わりに近づき、どの班もお菓子が完成して、女子のほとんどが可愛くラッピングすることに夢中。


「色葉ちゃんはラッピングしないの?」


「あたしは……渡す人いないから」


「ふぅーん。私はね、弟にあげるんだぁ」



丁寧にラッピングを施す佐原さんの手もと。みつあみが楽しそうに揺れている。



その横であたしは配布されたポリ袋に余ったケーキをひとつ入れて、口を玉結び。


……周りと数倍ほど違う女子力の低さに、びっくりしてる。



「いいねぇ姫路さん! そういう男の気配ないところがマジで最高!」


班員の男子に慰められるように叩かれた肩から、緊張が走って笑顔が固くなる。

「あ……ありがと……」


消えそうな声で俯くあたしを別の男子が「可愛い」と叫ぶ。


その声にほかの男子の視線まであつまってしまって。


……もうやだ。


そう思った時。



――ガシャーン。



高く響く派手な音がしてそこに注目が集まった。



二つ隣のテーブルにいる澄くんがボウルを落としたらしく、銀色の器が音を立てながらリノリウムの床を回転している。



それをすくいあげた澄くんは蛇口をひねり、腕をまくり上げてボールを洗いはじめた。



一連の流れに、どうしてこんなに目がいってしまうんだろう。


きっとほとんどの人が澄くんの醸し出すオーラに目を奪われていたと思う。


そしてその瞳が、勘違いじゃなきゃ、一瞬あたしの視線と合ったような気がして


心臓が速くなっていく。



「……小笠原って、雰囲気あるよな」


気付けば、男子の話題はあたしを茶化すことから、澄くんの話題へと切り替わっていた。


「小笠原くんは別格だよねぇ~」


佐原さんもラッピングの手をとめて、彼を見つめながらほほ笑む。



「でも観賞用。……小笠原くんって、今は女子に冷たいし」


……”今は”。


まるで過去を知っているような物言いに、ドキッとした。

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