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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第9章 先輩と傷跡

もうすぐ放課後。帰りのHRで先生の話を聞きながらも浮き立つ気持ちが止まらなくて、そわそわした。


早く会いたいな。
何を話そう。


……些細なこと、なんでも話したいけど。


澄くんは早くセックスしたいって思ってるかな。


それでも……いいけど……。できればゆっくり喋りたいな。


とにかく早く会いたい。


「きりーつ! 礼!」


終礼が済んで、帰り支度を始める生徒の声でいっぱいになった教室であたしも大急ぎでスクバに筆箱をいれていると、



「小笠原―、ちょっといいかぁ?」



担任の岡田先生が澄くんを手招きして、なにやら小声で会話している。



そんなに時間をかけずに、話はすんだようで岡田先生は教室を出て行った。



……どうしたの?


澄くんを見つめていると、顔を上げた澄くんとバチンと目があった。


――ちょっと来て。



顎が少し廊下側を指した気がする。
なんとなくそう言っている気がする。



そんなあやふやなジェスチャーで、あたしは廊下に出る澄くんのだいぶ後を足早にたどった。



ひとけのない非常階段の前で、澄くんは気だるそうな雰囲気で壁にもたれている。



目があって、胸がなる。


だけど、


「ごめん。今日放課後、無理になった」



その言葉で目の前が一瞬真っ暗になった。


「……え」


約束は、無し?

ショックを隠しきれないあたしに、澄くんは申し訳なさそうに頭を下げた。



ごめんっていう言葉よりも、楽しみにしていたのにがっかりしたって、そういう同じ気持ちがちょっとでいいからほしかったな。



……でも澄くんはいつものポーカーフェイス。


「……しかたないよね。先生の用事?」


「んー、まぁ。じゃあ俺行くね」


「え……」


もう?


あと少し、あと一分でいいから一緒にいたいよ。



でもそう思うのはあたしだけってわかってるから、最低限ものわかりのいいセフレでいたい。



「なに?」



だから、振り返る澄くんにあたしは笑顔で手を振った。



「ううん、ばいばい」


「ん。じゃーね」




片手をあげてあっさりと去っていく後ろ姿は、今日も……あたしを振り返るわけもなくて。



「はぁ……」



片思いがつきつけられて、心が鉛みたいに重くなる。


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