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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第9章 先輩と傷跡

「は、はい?」


へらりとへたくそな笑みを向けると、先輩は穏やかに頬を緩めた。



「俺ね、今年の四月に色葉ちゃんのこと知ったんだ」


「四月……?」



いつ会ったんだろう?


あたし、先輩みたいな目立つ人と関わりがあったとすれば、さすがに気づくと思うんだけど……。


だめだ、思い当たらない。



「いつですか?」


「4がつのはじまり、体育の授業の前。『更衣室が満員で入れないから空き教室で着替えよ!』なんてミナちゃんの提案で、空き教室で着替えたでしょ?」


「……あぁー、そんなこともありました」



だから今は、更衣室がすいている時間に着替えるようにしているんだけど。



「どうして、先輩が知ってるんですか?」



「その空き教室のベランダで一服してたんだよね、俺」


「たばこ吸うんですか……!?」



目をまんまるに見開くと、「ははっ、色葉ちゃんが嫌ならやめるよ?」



そういって、ポケットに入った水色のたばこの箱を先輩は握りつぶした。



「え……いや、そんなことは……しなくてよかったのに」



「今日は一本も吸ってないから臭くないでしょ?」



そう言ってあたしの隣に移ると、あたしの後ろ頭を片手で押さえて抱き寄せるように顔を近づけた。



「ね? たばこっぽくないっしょ」




窺うような目がすぐそこであたしを見る。


ち、近すぎ……!


「……っ」



胸をどんと押して、距離をとる必死なあたしを、先輩はきょとんとしてから笑った。



「ははっ、ウブだよね。ほんと」



こうやってからかっては目を細める異性に、心臓がバクバクなるのは仕方ないことだと思う……。

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