キツネ様の日記帳~鬼畜変態野郎と〇〇プレイ~
第10章 鬼畜変態野郎と溢れる愛
「え~、もう終わりなの~?せっかく楽しい恋のお話が出来ると思ったのに~」
「私の恋は楽しくないよ」
「えっ、何で?」
「パパとママと違って、結ばれないから」
首輪をぎゅっと握った。結ばれなくても縛られてるそれに安心して、ふうっとため息をはいた。ママはそれを不思議そうに見てたけど、「まっ、いいか~」と言って、「今日はごちそうね~」と話を変えてくれた。
たわいのない話をしながら歩いてると、大広間に着いた。警備の者が扉を開ける。未来の旦那様がオッサンだったらどうしようっていう微かな不安は、その人を見てぶっ飛んだ。
立っているのだ、あの人が。パパのそばに鬼畜変態野郎が立っている。笑顔の仮面を付けて、ちゃんとした正装で、パパと談笑している。
あごが外れそうなほど驚いた。きっとマヌケな面をしていたんだと思う。ママが笑いながら、耳打ちしてきた。
「あなたもパパも、ご主人様の欲望をなめすぎよ~。ようやく出会えた【運命】を手放すわけがないわ~」
そう言うとママは、楽しそうにパパに駆け寄った。二人に何かを言ったあと、鬼畜変態野郎がママに頭を下げた。そしてクルリとこちらを向いた。反射的にうつ向いてしまった。
夢なら早く覚めてほしくて、自分の手で顔をバンバン叩いてみても痛いだけ。その痛みのせいなのか何なのか、涙がボロボロ溢れ出た。
「よう、責任取りに来たぜ」
夢なんかじゃない。この上からの物言いは間違いなく鬼畜変態野郎だ。何なんだ。何でこいつが未来の旦那様になってるんだ。
「何でここにいるの?」
「世界の平和のため、人間界の王家と魔界の王家の繋がりを一つにして、二つの世界の守り人を勇者が勤めることになったーーっていう話を、おまえが家に帰り着く前に、魔界に届けたんだが、親父さんの説明を聞いてなかったのか?」
「……はっ!!?」
帰ってきたあの日、パパは説明しようとしていた。どうせ相手は勇者だろうって、この人じゃないなら誰でもいいやって気持ちでいっぱいで、現実逃避の日々へ。
もしあの時、現実と向き合っていたら……
サァーッと血の気が引いていく。それを見たこの人がため息をはいた。