
キツネ様の日記帳~鬼畜変態野郎と〇〇プレイ~
第6章 キツネ様の話し合い
「あなたはいいですよね。魔王の娘ですから生活に困ることはないですもんね。草の根を食べる生活とは無縁ですもんね」
「生活と平和を天秤に掛けても、平和が勝つに決まってるわよ」
「勇者が生きてるからこその平和です」
「勇者が生きる目的のために魔界の犠牲は必要ってわけ?」
「魔界なんて獣の住みで、ガキだってすぐに生まれる、いくらでも作れると聞きました」
「あんたら勇者一族って根本が腐ってるわね。一体誰の教えよ。マジで最低。同じ生き物と思えないわ」
「腐ってるのは魔族だ。戦争を犯したくせに悠々自適に暮らしやがって。誰が世界を救ってやったと思ってんだって、よく父さんが言ってました」
「お父さん?でもあんたは魔界のことを知らないんでしょう?何でそれを受け継いで納得してんの?」
「そうやって父から子へと受け継がれていくんです」
今すぐブチギレてやりたい。目の前にあるコーヒーをぶっかけてやりたい。むしろ何発だって殴ってやりたい。でも、耐えてやる。
ここで怒ったら、今まで耐えてきた魔王の想いが消えてしまう。それはダメ。何のためにご先祖様たちが耐えてきたと思ってるんだ。
でも、これでようやくわかった。勇者一族と魔族はわかりあえない。根っこは同じでも葉が別れるように、大昔の約束が根本にあっても、思いが違いすぎる。一体これをどうしろと?
「どうしたら約束を守るようになるの?」
「分かりません。僕も戸惑ってるんです」
「戸惑う?何を?」
「受け継がれていた情報が間違ってることに」
ユウタを見ると、申し訳なさそうにうつ向いていた。
「父さんから聞いていた情報では、魔族は野蛮で淫乱、極悪非道で、悪の中の悪なんだと」
「キツネが、アホのキツネが……っ」
隣に座ってる鬼畜変態野郎が笑った。とりあえず黙れの意味を込めて、足を蹴ってやった。
「でも実際に会った魔族……というか、魔王の娘さんは……その、美人で愛らしく、ちょっと小悪魔な感じもしますが、……めちゃくちゃかわいいからっ、魔王討伐とかもうどうでもいいやって思ったり……うわっ、何言ってんだろ、俺」
ユウタはテーブルに突っ伏した。こんなやつに言われても嬉しくないけど、褒められるのは嫌じゃないし、うんうんとうなずいた。
