僕らのStoryline
第10章 兄貴の恋
兄さんの腕の中にいるから、顔が見えないけど、
制服からして男だし、なんか髪の毛ピンクだし、
っていうか、こんなところで何してんだよ。
色んなことを考えていたら、枝を踏んだ。
ポキッ
やべっ
思わずしゃがむ。
声は聞こえないけど、二人の足音が遠ざかっていく。
しばらくそのまま動かずにいた。
こんなところで抱き合っていた。
兄さんが。
昔、母さんが夜、仕事に出ていくとき俺は毎回泣いていた。
もっと、母さんと一緒にいたくて。
今思えば俺たち二人を育てるために昼間も夜も働くしかなかったんだけど、当時の俺にはそれが分からなかった。
俺たちをおいて仕事に行く母さん。
寂しくて、寂しくて。
そんな時、兄さんがいつも俺を兄さんの布団に招いてくれて俺の背中を優しくリズム良く叩いてくれて、抱き締めて眠りについていた。
そんなことを思い出した。
俺の知らない兄さんがいる。
当たり前なんだけど、なんだか、とても寂しくなった。