不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第21章 オムライス
私が台所でオムライスを作っている間、瀬川くんはちょこちょこやってきてジッと見たり、なにか言葉を交わしてまた戻っていったりする。
「そんなにおもしろい?(笑)」
「いや…料理ってほんと、出来ない男からすると魔法(笑)」
「あはは!大げさだよ~。あ、卵は半熟と固焼きどっちがいい?」
「お前はどっちが好き?」
「私は今どきのトロトロしたやつより、固いのが好きだな。昔ながらの喫茶店みたいな(笑)」
「うん。俺も(笑)」
出来上がったオムライスにサラダとスープを添えてテーブルに並べ、2人で子供のように「いただきます」をする。
「ん・・・!!うまい!!俺、店以外で食ったの中学以来かも」
「え、ほんとに?まぁお店に比べたらアレだけど…超ベタなこんなオムライスで良ければ、いつでも作りに来ます(笑)」
「これがいいんだよ。店のやつって、なんか洒落てて食いにくい。俺デミグラスソースじゃなくてシンプルにケチャップが良いし(笑)」
「私も~~(笑)」
笑い合って食べるオムライスは儚い幸せの味。
甘酸っぱいケチャップが現実に引き戻そうとするが、私はそれを振り切って夢の時間を味わう。
「---紀子には…作ってもらわなかったの?」
「…え?」