不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第23章 熱のあとで
「あぁ~美味しかった。瀬川くん、ごちそうさまでした。かき揚げとか煮付けも食べてみたいし、また来たいな」
「じゃあ…明日もあさっても来ちゃうか」
ぼやくように言いながら運転する瀬川くんのその言葉が現実にはならないことを、私たちは分かっている。
海辺の駐車場に車を停めると、砂浜を少し歩くことにした。波は高く、2月の冷たい風が時折つよく吹き付ける。
繋いだ手を瀬川くんのポケットに詰め込んで、寄り添うように砂を踏む。
「本当に楽しかった…。それに、しばらく連絡取ってなかったから寂しくて…会えて本当に良かった」
「…また会ったらお前のこと壊すって分かってたから。ごめん…結局耐えられなかったし…」
「謝らないでよ。…でも、もう寂しくしないで。……なんちゃって(笑)」
瀬川くんは立ち止まり、私をそっと抱き寄せる。
「…本当に一緒に地獄に行っちゃおうか」
すごく切なくなって、私は彼を目一杯の力で抱きしめる。
「うん…一緒に行く。」
私たちはそうしてしばらく抱き合っていた。
びゅうっと強い風が吹き、私たちは車へと戻る。
空は曇り始め、今にも降り出しそうだ。
途中の自販機で瀬川くんが温かい飲み物を買い、手渡してくれる。
もうすぐ駅につく。
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駅につく頃、やはり雨が降ってきた。
静まり返る送迎レーンの隅に車を止め、瀬川くんが電車の時刻を確認する。
「あと15分で来るな。寒いしもう少し車で待とう」
「うん、…ありがとう。」
「…そんな顔すんな。」
「だって…寂しくて」
「またすぐ会える。俺も帰るし、お前も時間あれば会いに来て」
「うん…」
「…………」
少しの沈黙のあと、缶コーヒーを一口飲んでから瀬川くんは低いトーンで話し始める。