不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第24章 それぞれの事情
あの同窓会以来、結局奈美はミノルくんと何度か2人で会っていて、家庭内の相談事をし合うくらいに距離が縮まっているようだった。
「奥さんが仕事に夢中で、帰ってこない日とかもあるみたいで。子供はまだ4歳だし、ミノルも仕事があるし色々大変らしくって…」
「奥さんどんな仕事してるの?」
「広告代理店の専務らしいんだけど、業務以外にも接待とか忙しいみたい。今はミノルの実家で子供見てもらったり、ミノルもそのまま実家で寝たりでほとんど別居状態って」
「あららぁ…ミノル君も大変なんだね」
そう言って紗奈はオレンジジュースを飲み干すと、空中を見つめる。
「…奈美は、旦那さんとうまくいってるの?」
「うん…可もなく不可もなくって言うか。特に仲良しでもないけど喧嘩もしない。ただ、ミノルの事ほっておけない自分もいるんだよね…」
「そっかぁ。離婚はもう、すぐにする感じなの?」
「うん。特に裁判とかもなく、子供はミノルが引き取る形で離婚が成立しそうみたい」
「色んなカタチがあるねぇ…」
そう言う紗奈を横目に、そのときの私は奈美とミノル君のことについて深堀りはしなかった。出来なかった。
「なんかね。旦那はもう、家族っていうか…恭介っていう共通の大切なものを一緒に守る人っていう感じ。正直それ以上でも以下でもなくって、たぶん旦那もそう思ってると思うんだ」
グラスに付いた水滴をいじりながら奈美は言った。
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[ うまそう!今度お店教えてよ。お前が肉にかぶりつくとこ、見たいし(笑)]
バルの帰り、2人と別れると瀬川くんからのメッセージを確認する。
つい笑みがこぼれてしまうけれど、『離婚』というワードをさっき奈美に聞いてから、胸がざわざわしている。
「離婚…か…」
フミと離婚することは現実的に想像がつかない。
けれど、このままの生活を続けていく自信もなければ、私の求めているものでもないことは確かだった。