不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第24章 それぞれの事情
どう見ても女性向けの店構えだけれど、彼は入り口の近くに飾られているショーケースをジッと見ている。
「ちょっと、」と手を引かれ店内に入ると、スーツを来た女性スタッフが上品に挨拶をする。
瀬川くんの見つめていたショーケースには、いくつものネックレスが飾られている。
「クリスマスプレゼント、やっぱなんか買わせて。風邪引いたときも来てくれたしお礼」
「えっ…?いや、そんな、いいよぉ、…悪いよ」
私の言葉に耳を貸さず、
「これとか似合いそうじゃん」
とシンプルで私好みのネックレスを指差す。
「だめだよ瀬川くん…!いつもお金出してもらってるのにこんな高価なものまでもらえないよ」
「高価ってほどでもないだろ(笑)買わせてよ。お願い。」
彼は一瞬真剣なトーンで言うと私を見つめる。
「でも…」
言いかけたとき、50歳くらいのベテランらしき女性スタッフがやってきて、
「これ、シンプルですけど首元にすごく映えて素敵なんですよぉ~。」
と言いながらショーケースをあける。
「あっ、あのっ…」
「付けてみれば?」
瀬川くんが私の言葉を遮る。
女性スタッフの手によって、殺風景だった私の胸元にピンクゴールド色の華奢なネックレスが光る。
鏡に映るそれはデザインもよく、瀬川くんと一緒にいるこのシチュエーションがそれをさらに特別に思わせた。
思わず顔がほころぶと、こちらを見つめていた瀬川くんが優しい笑顔をくれる。
「気に入った?」
「う、うん…可愛い」
「じゃあこれ、カードで」
「ありがとうございますぅ~~。このまま付けていかれますか?」
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結局ネックレスを付けたまま2人で店を後にすると、改めて瀬川くんが私を見て「似合う、似合う」と嬉々としている。
「ありがとう…すっっごく嬉しい。だけど…ねぇ、お願い!このままじゃ気がおさまらないから私にもなにかプレゼントさせて。本当に!」
「え~。俺欲しいもの特に無いよ。気にすんなよ。」
「だめ!これは絶対にだめ」
「なんでだよ(笑)」
また自然に手をつないでくれる瀬川くんが愛おしくてたまらない。
「なんかないの?欲しい物」