不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第25章 離別の道
「平野と一緒だった女の人、年上っぽかったね」
「うん。10個ぐらい上だよ、確か。旦那はもっと上」
「そ、そうなんだ…」
それ以上は何も言わなかったし、瀬川くんも何も言わなかった。
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瀬川くんが買ってくれたジュースを持って、チケットに書かれている番号のシアターへ向かう。
「俺、映画館って10年くらい来てないわ(笑)」
「私も!レンタルして家で観るから…」
「ダラダラできるしな」
「そうそう(笑)」
シアター内が暗転し、映画が始まる。
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エンドロールが終わり、瀬川くんに支えられて階段を降りる。
「お前、泣きすぎな(笑)」
「だってぇ~もう、せつなくてぇ…」
何度も観たことがある映画なのに、私は感極まって泣いた。
化粧を直すためにトイレに寄り、ショッピングモールを後にする。
道路は空いていて、待ち合わせの19時よりも少し前に店に着きそうだ。
瀬川くんの携帯が鳴り、ハンズフリーで電話に出ると相手は平野だった。
「さっきはどうも(笑)俺、もう店ついちゃったんだけど。瀬川たち今どこ?」
「どうも(笑)俺らももう着くよ。」
少し話して電話を切った頃、お店の駐車場に着いた。辺りはすっかり真っ暗だ。
車から降りるために繋いでいる手をほどこうとすると、ぐいっと引っ張られ顔と顔が近づく。
息がぶつかるほどの至近距離で見つめられ、私は嬉しいのと待ちわびていたのとで自分からそっと口づけた。
瀬川くんはそれを優しく受け入れ、やわらかくキスしながら私の耳を撫でる。
「俺さぁ…」
「ん?」
「お前に、なんていうか…強制とかしちゃってない?お前、気使ってない?」
「えっ?そんなこと少しも感じてないよ。なんでそんなこと言うの?」
「いや、何となく。お前いつも俺を受け入れてくれるし、それ(ネックレス)も俺が強引に選んで押し付けた感じだったら悪いなって。調子乗ってるかな、俺?」
めずらしく気弱なことを言う瀬川くんが愛しくて、ぎゅっと抱きしめた。