不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第25章 離別の道
「明日は仕事の打ち合わせがあるし、そろそろ帰らないと…」
私が言うと、「えぇ~もう?」と少し酔ったコウヘイ君が駄々をこねる。
「うん、私ももっと飲みたいけど朝早いから…温泉楽しみにしてるね!」
私が立ち上がるとコウヘイ君は腰を少し上げ、
「じゃあ外まで送りまーす!」と言う。
すぐに瀬川くんが立ち上がり、「いや、俺行くわ」と言って私の背中をそっと押す。
「じゃ、ミライちゃんまたね~!4月よろしく!」
笑顔で手を振る平野の隣でコウヘイ君は不服そうな顔をしながらこちらを見ていた。
外に出ると土曜日の夜は心地よい涼しさで、なんだかワクワクするような風の匂いがする。
「今日は本当にありがとう。楽しかった…これ、大事にする」
「おう。付き合ってくれてありがとな。むさくるしい男の飲み会にも(笑)」
「アハハ(笑)そんな事ないよ~!面白かった。」
私たちはほんの少しだけ抱き合うと、じゃあまた連絡するね、と別れた。
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それから1ヶ月間、私は多忙を極めていた。
春にオープンするお店などの新規案件や、これまでの顧客のスプリングセールに伴うデザイン変更などで打ち合わせのハシゴをし、ほとんど眠れない日も何度かあった。
「あぁ~っ……疲れた…」
22時過ぎ、ようやく一段落したデータたちを眺めるとどっと疲れが肩にのしかかる。
瀬川くんとのトークルームをひらくと、2日前に届いたメッセージが最後になっている。
[ 遅くにごめんね。やっと仕事が少し落ち着いたから、一息ついてるところ ]
送信ボタンを押すと私はおもむろに寝転び、天井を見つめる。
はぁ~~、と大きなため息を吐き出す。
携帯が鳴り、瀬川くんからの着信と分かると私は体育座りをして通話ボタンを押す。