不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第27章 お茶の時間
お店の前に着くと味噌の甘じょっぱい匂いが漂い、串に刺さったこんにゃくがグツグツと揺れている。
「2本下さい」
瀬川くんが言う。
「え、瀬川くん要らないの??」
「お前の一口ちょうだい(笑)」
私たちの関係を知らない同級生がたくさんいるのに、2人でいるかのように親しげな瀬川くんに少し戸惑う。
彼がお店のおばさんに小銭を払う。
「いいのに!出すよぉ」
「いいから」
「もうっ…いつも出してもらってる。私もなにかしたい!」
「じゃあオムライス(笑)」
「そうじゃなくて~~!」
私たちはじゃれ合いながら味噌田楽を受け取る。
たくさんの露店が出ている中で、一番端にあり目立たないこのお店の周りには、同級生は見当たらない。
私は瀬川くんに味噌田楽を差し出し、彼はそれを一口食べる。
「…熱っ!…うん。うまいね」
「でしょ?!なんか懐かしい味するよね?」
「うん。確かに。」
私も一口食べ、それから瀬川くんと交互に食べた。
大好きな味噌田楽をもぐもぐとしていると、瀬川くんが無言で私の口の端を指で拭う。
「ん?!」
びっくりして声を上げると、
「味噌ついてた(笑)…にしても、お前ってほんとに美味そうにニコニコ食うよね」
と言って彼は拭い取った味噌をぺろりと舐めた。
人影に目をやると平野が通り過ぎるところで、
「あっ…ごめん、見ちゃった(笑)ごちそうさまです!誰にも言わないから安心して~」
と言ってニヤニヤと笑いながら去っていく。
瀬川くんは気にする素振りもなく、「見られたね(笑)」と言いながら歩き出す。
「あ!ミライ~!ありがとう。あれ?1本?」
「もう食べちゃった(笑)」
味噌田楽を手渡すと、アンナは嬉しそうに頬張る。
「さて、行きますか!」
平野の一声でみんなが車に乗り出す。
私たちも瀬川くんの車に乗り、温泉地へと向かった。