不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第27章 お茶の時間
川沿いに続く温泉街が、旅行に来たという気持ちを踊らせる。
古びてはいるが、歴史ある赤い橋や、ところどころに木製のベンチが並んでいる。桜が咲き乱れるそのメイン通りは、私を開放的な気持ちにさせた。
「うわぁ~!すごいね!」
アンナは窓をあけて外を見る。
「うん、いいところだね~!ちょっとお散歩したいね、天気いいし」
平野の車についていくと少し狭い道を入り、すぐに旅館の駐車場がある。
昔ながらな佇まいのその旅館はとても大きく、すべての窓には木製の手すりが取り付けられている。
12名すべてが車から降りるとなかなかの大所帯となった。
「お疲れさまです!えっと今回は…男が7人と女の子が5人。女の子たちは部屋ふたつ取ってるんで2:3に分かれて下さい。男衆は全員一緒の大部屋で~す(笑)」
平野が言うと、「合宿じゃん(笑)」「朝まで飲もうぜ」などと楽しげな声が上がる。
館内に入ると平野がチェックイン手続きをし、「あとで集金するんでとりあえず部屋行きましょう!」と言う。
私とアンナは「桜」という部屋で、綾香ちゃんを含む3人の女子は隣の「楓」に入る。
男たちは少し離れた大部屋の「松」にぞろぞろと入っていった。
こぢんまりした私たちの部屋の窓からは、その部屋の名のとおり目の前で咲き誇る何本もの桜が見える。
「すごぉい!ワクワクしちゃうね~!」
アンナは窓の外をひとしきり見ると、そわそわしながら座布団に座る。
「ほんとだね、アンナと旅行っていうのがまず久しぶりで嬉しいなぁ。」
私は備え付けのお茶セットをひろげ、温かい煎茶を淹れる。
「そうだよね?バラ組で最後に旅行に行ったのって…いつだっけ?!」
「え~っと…んん?いつだったかな?」
湯気の立つ湯呑をアンナの前に置くと、「ありがとう!」と言ってフーフーしているアンナが可愛らしい。
コンコン、と部屋の扉をノックされ、「はーい」というと扉の向こうから「あけますよ~!」と平野の声がする。
「来て早々ごめんね、集金いいかな?朝夕食付きで1人3,000円お願いします!」
「「…えっ?」」
私たちは財布を取り出しながらハモる。