不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第4章 高鳴る胸の鼓動
落ち着きかけた心臓が、また大きな音を立てる。
どうしようかと一瞬迷ったけれど、なかば勢い任せに通話ボタンを押す。
携帯を耳に当てると、遠くでザワザワとした店内の音や声が聞こえる。
「もしもーし??ミライちゃーん??」
「平野〜!久しぶりだね。元気?」
「元気元気、一緒にいる大男も元気だよ(笑)」
電話の向こうで、瀬川くんの小さな笑い声が聞こえる。
「まさか瀬川くんと飲んでたなんてビックリだよ。大男は私のこともう覚えてないかな(笑)」
「覚えてないどころか、あいつ今なにしてんの?って瀬川が聞いてきたんだよ、さっき。だからメッセージしたわけ。」
「え〜そうだったの?!覚えてたか〜!」
私はなるべくいやらしくならないように、つとめて明るく答える。
瀬川くんが私のことを聞いていたなんて信じられないけれど、心臓が嬉しい、嬉しいと言っている。
「いや、フツー忘れないでしょ(笑)2人仲良かったし!ってことで瀬川に変わるね〜」
…ちょっと待って!
と言うより先に、平野の携帯は瀬川くんに渡されたみたいだった。
「もしもし。」
ーーー瀬川くんの声だ。
実はこんなに嬉しいんだという事を察されないように、私は静かに唾を飲み込んだ。