不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第4章 高鳴る胸の鼓動
「おーーい?もしもーし。息してるー?」
アハハ!と平野の笑い声も聞こえる。
「あっ!…うん!はい!!瀬川くん、久しぶりだね!」
「大丈夫かよ(笑)っていうか何年ぶりだろうな、話すの。」
「ね、ほんと。感動だよお〜…。元気そうでなにより。今どこに住んでるの?」
なるべく当たり障りのない話をした。
結婚とか、子供とか、そういう事はお互いに話題にしなかった。
瀬川くんは今、となりの県の中学校で体育教師をしているらしかった。
車で2時間の道のりを毎日通勤するのは大変だし、なにかあってもすぐに駆け付けられないからアパートを借りているんだとか。
「月に1〜2回はこうやってこっちに帰ってきてる。お前はどうしてんの?」
帰ってきたときは、紀子が待つ家で眠るんだろうか。
でも聞けなかったし、なんだか今は聞きたくなかった。
私も住んでいる場所や仕事について簡単に話した。
「デザイン?へぇ〜すごいな。そういえば専門学校いってたって聞いたことあるわ。」
どこかから、私がデザイン系の専門学校に通っていたことを聞いたみたいだった。
また再来週にね、と電話を切ってからも、私の顔は緩んでいる。
久しぶりに話した瀬川くんは、あの頃と変わらず私のことを「お前」と呼び、落ち着いた様子だった。