不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第29章 睨み合い
「ところで2人とも、ずいぶんキチンと帯しめてるね?かっこいいな~!」
「ミライが上手なんだよ。私は出来な~い(笑)」
「マジで?」
「うん、おばあちゃんが教えてくれて」
「じゃあ俺のもやって!」
平野が目を輝かせている。
「いいけど、期待しないでよ(笑)」
私は平野の帯を一度ほどき、しっかりと結んでいく。
出来上がるとアンナは写真を撮りながら、「やっぱビシッと決まっていいねぇ!」と絶賛する。
「平野、いるか~?」
扉の外から声がする。瀬川くんだ。
「おう!いるよ~!瀬川ちょっと来てみ!」
平野が言うと扉が開き、髪の濡れた瀬川くんが入ってくる。
「女将さんが幹事探してたぞ」
「あぁ、分かった今行く!それより、どうよこれ?ミライちゃん帯結べるんだって。お前もやってもらいなよ」
「そうだね!それがいいよ!私も平野と男子の部屋に行って待ってるね」
あっという間に平野とアンナは部屋から出ていってしまい、私と瀬川くんはクスリと笑う。
「あいつら…(笑)」
「ふふっ。よかったら帯、結ぶよ。」
私は瀬川くんの帯に手をかけると、しゅるりとほどく。
胸元があらわになると急に恥ずかしくなり、目をそらしてしまう。
瀬川くんはゆっくりと優しく私を抱きしめ、髪を撫でる。お風呂上がりの良い香りに包まれ、クラクラしてしまう。
「…ごめん。こんな時なのに」
「?…なんで謝るの?」
「…今からキスするから(笑)」
私が見上げると彼は優しく唇を当て、次第に深く舌が入ってくる。
「んっ…んん…」
待ちわびた瀬川くんのキスに脳が震える。
窓の外でさわさわと風に揺れる桜の木の音に混じって、私の吐息が静かに響く。
彼の浴衣に腕を差し込み、肌を撫でる。
引き締まった熱い身体は私をぞくぞくさせ、下半身から力が抜ける。
「…おい、あんま触んな。…止まらなくなる」
「瀬川くん…っ。…ふぁっ……」
首にキスされ優しく吸われたとき、扉を叩く音がする。
「瀬川~?いる?」
コウヘイくんの声だ。
私たちは急いで姿勢を正す。がらりと扉が開き、私はあたかも今ちょうど瀬川くんの帯を結んでいるところだというような体勢で迎える。