不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第5章 空想の恋
翌朝、私は仕事部屋のソファで目を覚ました。
あれから仕事の続きをして、ちょっと休もうとソファに座ったら眠ってしまったんだ。
フミはきっと寝室で寝ているだろう。真夜中に帰ってくる事はあっても、外泊した事は今までに無かった。
様子を伺いに寝室のドアを少しだけ開けてみると、やはりフミは眠っていた。
静かにドアをしめて、私は奈美のところに行くため準備を始める。
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奈美の実家には、お母さんが昔から営んでいる少々レトロな美容室がくっついている。
慣れた足取りでドアをあけると、カランカランッ…と心地よいカウベルのような音がする。
「あらミライちゃん、いらっしゃい。ちょっと待ってね。 奈美ーーー!!!」
いつものように奈美のお母さんが出迎えてくれて、すぐに奥から奈美も出てきて片手をひらひらと泳がせる。
「ミライ〜!待ってたよぉ〜。」
3つある椅子のいちばん奥に座り、奈美に髪を切ってもらう。
「相変わらず良い髪だね。」
丁寧に櫛で梳かしながら、優しくまったりと話す奈美。
いつも私の髪を褒めてくれる奈美は、カラーもしない、パーマもかけない私の髪を好きだ好きだとよく言う。
話題はやっぱり同窓会の事になり、私は昨夜思いがけず、平野と瀬川くんと電話で話した事を伝えた。
「ほんとに〜?良かったじゃん、ミライは瀬川くんがほんとに好きだよねぇ」
ニコニコしながら奈美は言う。
深い意味はないかもしれないけれど、これは私にとってどこか特別な言葉だった。
"ミライと言えばコウヘイが好きだったよね。"
多くの同級生に今でもそう思われているであろう中、私が瀬川くんを気に入っている事をちゃんと認識してもらえている事がなんだか無性に嬉しかった。
「うん、私瀬川くん大好きだからね!」
さも当然の事のように、本気のトーンにならないように、明るく答える。