不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第30章 宴
「あれ!」
オーソドックスなテディベアのマスコットを指差して言うと、
「ミライちゃん、意外とカワイイとこいくね(笑)」
と平野が笑う。
「意外ってどういう意味ですか?!」
私も笑う。
瀬川くんは店主に小銭を渡すと、コルクの弾を込める。
アンナはご当地キャラメルを取ろうと、男子たちと一緒になって騒いでいる。
狙いを定め、一発目を打つとそれは見事にテディベアに命中し、ぽろりと転がった。
「えぇ?!瀬川くんすごい!!」
テディベアを手渡されると、ボールチェーンが付いていてどこかにぶら下げられるようになっている。私は一気にそのマスコットに愛着がわき、優しく握りしめた。
「ありがとうっ…!わぁ、嬉しい~。可愛いっ!」
まだ4球の弾が残っていたけれど、瀬川くんはそれを平野に手渡した。
「え、俺っ?」
「もう用は済んだから…お前も彼女になんか取れば?取れるもんなら(笑)」
「おぉ?言ってくれるね瀬川くんよ!よっしゃ、見てろよ」
平野は気合十分で前に出ていった。
2人で平野の姿を見守りながら、私はもう一度テディベアを見て嬉しくなる。
…ふっ、と隣で瀬川くんが笑う。
背の高い彼が浴衣姿で腕を組む姿はとても様になっていて、思わず見とれてしまう。
平野が振り向きこちらへ戻ってくると、手にはプラスチックに入った小さなお菓子を持っている。
「最後の1球で妥協のラムネですが、なにか?」
と言い、私たちは声を上げて笑った。
そのうちにコウヘイくんがやってきて、ピンク色のふわふわしたキーホルダーを自慢気に見せる。
「取れた!!」
後ろでは綾香ちゃんも見ている。
「コウヘイくん、それ私にちょうだいよぉ~!」
「えぇ…だってこれはミライちゃんに…って、もうなんか持ってるしーっ!」
「あっ、うん…可愛いでしょ?」
テディベアを見せると、
「瀬川が一発で取ったんだぜ!綾香ちゃんなにももらってないんだから、あげなよ~」
と平野が言う。
「チッ!また瀬川の抜け駆けかよ~!」
そう言ってコウヘイくんはキーホルダーを綾香ちゃんに手渡した。
「わあい♪大切にするね?どこに付けようかなぁ~!」
とっても喜んでいる彼女に、私も嬉しくなる。