不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第32章 テキーラ
1本ずつ缶のお酒を買い、部屋に戻ろうと歩き出す。
階段を登ろうとしたとき、後ろから声が上がる。
「あーっ!やらしい2人、ハッケーン!!」
すぐにアンナの声だと分かったが、振り返ると平野やコウヘイくんも一緒だ。
「酔ってるね(笑)おかえり、楽しめた?」
私は平常心を装って答えた。
「アンナちゃんが俺らに一気飲みさせるわ、マイクは離さないわで会計怖すぎて切り上げてきた(笑)」
平野が答えると、
「いんや!まだまだ飲むよぉ~~!!」とアンナは元気いっぱいだった。
男子たちの手には、どこかで買ってきたらしいお酒やおつまみがどっさり入った袋がぶら下がっている。
「アンナ、大丈夫?」
私がアンナの腕をそっと支えると、
「だいじょぶ、だいじょーーぶ!」
と言いながら、だらりと私に寄りかかってくる。
そのまま皆で階段を上り始めたとき、
「ねぇ、瀬川たち何してたの?!」
とコウヘイくんが言う。
「なにって、夜桜見ながら熱燗飲んだり(笑)」
「そうそう、綺麗だったよぉ~。」
私たちが話すと、
「ふーーーーん?アヤシ~~」
コウヘイくんは眉をひそめる。
「何言ってんだよ。それよりお前、ストリップは行かなくていいのか?(笑)」
瀬川くんが冗談交じりに言うと、
「お、俺はそんなの興味ないもんねっ!俺、紳士だから!」
おどけた顔で答えると、平野と瀬川くんは「ウソつけ(笑)」と笑った。
本当は2人で夜桜を眺めながらチョコレートを食べて乾杯したかったけれど、ひとまず男子たちの部屋「松」にみんなで入る。
私たちがお風呂に行っている間に帰ってきたらしい他のメンバーも、すでに部屋で酒を飲んでいた。
この部屋にも布団が敷かれているが、男子たちが寝転がったり座り込んだりしてもうだいぶ乱れている。
隅にやられた大きめのちゃぶ台を囲み、みんなで改めて乾杯をした。
「ちょっと寒くない?!」アンナが言うと、平野がリモコンで暖房を入れてくれる。
誰も見ていないその一瞬、はだけて太ももが見えていた私の浴衣の裾を瀬川くんがクイッと直す。
”ありがとう”と目で合図をすると、コツンと私の額を叩く仕草をする。
私が照れ笑いをしていると、
「なーにー?!どうしたの?」
とアンナが言う。