不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第32章 テキーラ
「ううん、なんでもないよ。それよりアンナ、スナックは楽しかった?」
「うん!もうね、最高に楽しかったぁ~~!私が歌うじゃん?そうするとね、平野とコウヘイくんが必ず拍手してくれんの!!あっはっは!!」
愉快そうに笑うアンナは酔っ払って頬や鼻を赤く染めている。
「だってアンナちゃん、拍手しないと叩くんだもん…」
とコウヘイくんが嘆くと、平野がゲラゲラと笑った。
いつのまにかこの取り巻きに参入していた綾香ちゃんがコウヘイくんに寄りかかって甘える。
みんなで談笑し時折大笑いが起こるこのちゃぶ台の周りには、ほかの同級生もぎゅうぎゅうと集まってくる。
押しやられて少し詰めると、あぐらをかいていた瀬川くんの膝に私のお尻が当たる。瀬川くんは当たり前のように向きを私の方に変えると、私の背中のすぐ後ろには彼の胸板がある体勢になり、ひそかに胸がキュンとする。
いつの間にか夕食の時よりも激しいどんちゃん騒ぎが始まり、浴衣を脱いでパンツ一丁で逆立ちをする者や演歌を熱唱し出す者が現れ、私たちは大いに笑った。
大笑いをして少し後ろに倒れると、トン…と瀬川くんの胸板に当たる。
ときどき誰にも見えない角度で、体育座りをする私の太ももを下から撫でる瀬川くんも、楽しそうに笑ってお酒を飲んでいる。
逆立ちに失敗した同級生が勢いよく転がってくると、「おい、向こうでやれよ(笑)」と後ろから私を大事そうにかばう瀬川くんに、もう一度すべてを委ねたくなる…。
アンナが袋からお酒の瓶を取り出し、「あっ!これ買ったんじゃん!いひひひ~!」とニヤついた。
「この時間からそれいっちゃうとか、マジで気持ちだけ若返るね(笑)」
と平野が言い、おちょこにすこし注ぐ。
「なになに?」私が問うと、
「テキーラだよ!バラ組で飲んだとき、私が死んだやつ~!(笑)」
とアンナが大声で言う。
「アンナ、あのときめちゃくちゃ面白かったよ(笑)でももう若くないから気を付けないとね(笑)」
私が言うと、「気付けに一杯、いきま~す!」とコウヘイくんがそれをグイッと飲んだ。
「クゥ~~~!!効くネェ~~!!」