不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第5章 空想の恋
「瀬川くんとうちの旦那、前は同じ学校で働いてたんだよね。」
「そうなのっ?!」
「うん。だけど赴任の話が出て、家族もいるし難しいんじゃないかなぁって旦那は言ってたんだけど…瀬川くんは二つ返事だったらしいよ?なんかすごく田舎の中学校なんだって。教師が足りないみたいだよ。」
私は瀬川くんの新しい情報がどんどん入ってくる事にワクワクしていた。
と同時に、"家族"という言葉に紀子の存在を思い出す。
「紀子、元気にしてるのかな?」
いたって平常心、といった口ぶりで聞いてみる。
「さぁ…どうだろうね?同級生のグループチャットには参加してるよね。なぜか瀬川くんは居ないけど(笑)」
奈美も当時から紀子とはあまり接点がなく、今でも私生活についてはほとんど把握していないようだった。
「なんか、良からぬ話は旦那から聞いたけどねぇ」
苦笑いしながら言う奈美に、私はすぐにでも食いつきたかった。
けれどひとまず落ち着いて、ランチタイムまで我慢する事にした。