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不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―

第35章 旅館での朝



翌朝、障子の向こうから刺す陽の光で目が覚める。


隣では裸の瀬川くんが私を包み込むような体制でスヤスヤと眠っていて、触れ合っている肌で自分も裸だということに気付く。




アンナは居なくて、隣の布団も綺麗に敷かれたままだ。


寝ぼけ眼で携帯を確認すると、時刻はもうすぐ8時になるところだった。

昨日のテキーラのせいか、まだ頭がふわふわとしている。




どうしよう…誰か来たら…そう思いながらも、私は現実に引き戻されたくなくてもう一度瀬川くんの胸元にそっと潜り込んだ。


優しく抱きしめられると、今起きたらしい彼が眠そうな目で微笑む。


私たちは意味もなくクスクスと笑い、もぞもぞと抱き合う。



「ふふっ…。…あ!」

私は瀬川くんの胸元を見て声を上げる。



「どした?」

「…瀬川くん。…ごめん…」



キスマークを指差して言うと、

「なんで今さら謝んの(笑)」

と彼は笑い、上半身を起こして障子を少しだけ開けた。



まさかこんなに濃く色づいているとは思っていなかった私の痕が、朝の光に照らされる。

その光は彼の引き締まった身体を強調するように陰影を付け、乱れた布団と相まって一段と色っぽく魅せた。


この人に昨夜激しく抱かれたのだと思い返すだけで、私の全身が悦ぶ。




障子の隙間から揺れる桜を少しの間眺めると、

「さすがに…そろそろ裸はマズイよな(笑)」

と瀬川くんが言う。



「うん、とりあえず浴衣き…」
そう言った瞬間、扉をコンコンと小さく叩く音がする。



私の心臓が跳ね、とりあえず肩まで布団に潜った。





「……誰?」




私が言うと、扉の外から「俺、平野」と声が返ってくる。



「なんだ、平野か(笑)」

瀬川くんが言うと、平野がなにかをぼそぼそと喋っている。




私たちは顔を見合わせて耳を澄ませるが、どうしても聞き取れない。



「何?全然聞こえないけど」

また瀬川くんが声をかけると、

「…ごめん!ちょっとだけ開けるよ!いい?!」

と抑えた声量で返事が返ってきた。



私はまた慌てて布団に潜った。




瀬川くんは私が肩まで潜った事をしっかり確認すると、自分のことは気にする様子もなく、布団から裸の上半身を持ち上げた状態で「いいよ」と返事をした。



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