不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第35章 旅館での朝
2人で「桜」の部屋を出ると、廊下を歩いてひとまず男子たちの「松」の部屋へ向かう。
そっと扉を開けると、ちゃぶ台とその周りはトランプや酒やつまみが散らかり放題で、男子たちに紛れてアンナや綾香ちゃんも見事にバラバラの角度で眠っている。
「うわぁお…(笑)」
私たちは静かに笑い、私はちゃぶ台のまわりを片付け始めた。
「俺、風呂行ってくるわ…コウヘイめんどくさそうだから」
瀬川くんは少しおどけて言い、眠っているとはいえ皆がいるこの場所でチュッと私の頬にキスをして部屋から出ていった。
だいぶ片付いた頃、ぽつぽつと数人が起き始める。
「…んん、おはよ~。他の奴は?」
「おはよ(笑)平野たちはお風呂に行ったよ。」
1人の男子と話しているとアンナがむくっと起き上がり、
「ううぅ~!頭いたぁーい!!」
と、こめかみを押さえる。
「アンナ大丈夫?」
「あっミライ、おはよ!もう昨日めちゃくちゃ飲んだよ~…」
話し声でやがて全員が起き出して、男子たちは大浴場へ行った。
綾香ちゃんはまだ寝ぼけている様子で、目をしょぼしょぼさせて布団にくるまって座っている。
「どうする?私たちもお風呂行く?」
声をかけると、2人はもぞもぞと立ち上がった。
平野が戻ってきて、
「朝食の時間とっくに過ぎちゃったから、おにぎりにしてくれた!」
と沢山のおにぎりをおぼんに乗せている。
「あれ?2人はまだお風呂?」
「ぼちぼち戻ってくると思うけどね~」
私たちも大浴場へ向かうと、のれんの前で2人と鉢合わせた。
「おはよう」とみんなで挨拶を交わすと、コウヘイくんもいつもどおりのテンションだ。
特に怪しまれている素振りもないので私は少しホッとしてお風呂へ向かった。
「昨日、瀬川くんと寝た?」
ぼそっとアンナに問われ、私はピクリと反応した。
”寝た”というのがどっちの意味なのか分からず、
「酔っ払っちゃって部屋まで送ってもらったよ」
とだけ答えた。
「ふふっ(笑)まぁまたじっくり聞くわ」
アンナはニヤニヤと笑いながら浴衣を脱ぐ。
お風呂から上がると私たちは鏡の前で化粧をして、暑がりながらドライヤーをかけた。