不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第5章 空想の恋
カットとトリートメントをしてもらった私の髪は、つやつやと生き返ったようだった。
「黒髪のミディアムヘアに、赤めのリップ。やっぱりミライはコレだよね。」
最後の仕上げをしながら奈美が言う。
「ありがとう。これからも私の髪のお世話をよろしく〜(笑)」
待ち合いの椅子に座ると、上着を着てバッグを持った奈美がすぐに戻ってきた。
「恭ちゃんは大丈夫?」
恭ちゃんは去年生まれた、奈美の子供だ。
「うん!今寝てるし、お母さんもいるからOKだよ。実家っていいよねぇ〜」
ほんわかした口調で話す奈美は、外に出ると "さむっ" と言って上着の首元をキュッと握りしめた。
11月の風は乾いていたけれど、日差しが暖かい。
カフェに着くと、外のソファ席の周りには大きなストーブが置かれている。
膝掛けも用意されていて、意外と暖かい。
私と奈美は外向きのソファに隣同士で座り、いつものピザや紅茶なんかを注文する。
川沿いで車通りも少ないこのカフェは、ゆっくりするのに最高の場所だ。
ふと、さっき奈美が言っていた事が気になって同級生グループチャットのメンバーを確認してみた。
70人もいるが、私はそれをすぐに見つけた。
「瀬川 紀子…」