不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第37章 瀬川くんの決断
「ねぇ…そんなに瀬川が良い?なんで……」
コウヘイくんがじりじりと近づいてくる。
「俺、ミライちゃんのこと好きだよ。ミライちゃんだけを大事にするよ……?」
壁に押し迫られ、逃げ場がない。どんどん顔が近づき、お酒の匂いが漂う。
私は目をギュッと閉じてうつむいた。
彼は私の髪に顔を埋め、鼻から大きく息を吸うと
「…っっはぁ…可愛い…」
と色っぽい吐息を吐いた。
「コウヘイくん…やめて…」
なんとか絞り出した声が彼に届くと、壁に両手をついて私を八方塞がりにした。
背の高いコウヘイくんが私の唇めがけてグンと近づいたとき、私はとっさに「い…やっ!」と声を出し、思い切り首を背けて拒絶した。
コウヘイくんはその浮き出た首筋にキスをすると、シャツのボタンをひとつ外した。
「…っ」
動揺で声が出ない。
「俺といたら、瀬川のことなんてすぐ忘れるよ。…ね、ミライちゃん…好きなんだよ…」
もうひとつボタンを外すと、はだけた胸元に唇を埋められる。
…生暖かい彼の唇を感じて鳥肌が立つ。
私は目一杯の力でコウヘイくんを押した。
びくともしない彼は私の両手首を掴むと、それを高い位置でひとつに締め上げた。
「んうぅっ……やめて…っ」
動揺と恐怖で涙が出そうになる。
次の瞬間、足音の方を見るとそこには瀬川くんが立っていて、私たちの状況を確認するとものすごい速さでコウヘイくんの胸ぐらを掴み上げた。
開放された私はへなへなとその場にしゃがみ込んでしまう。
「…邪魔しないでよ、瀬川~」
「ふざけんじゃねえ」
瀬川くんの低い声が空気をさらにピリつかせた。
「ふざけてないけど?」
コウヘイくんは真顔だ。
「お前、虫が良すぎるんだよ。紀子ちゃんはどうするんだよ」
「…お前には関係ない。口出すな」
「どっちも都合よくキープしておけるとでも思ってんの?」
その瞬間、瀬川くんはコウヘイくんの胸ぐらを掴んだままドンッ!と壁に押し当てた。
「こいつのこと気に入ってるお前の気持ちは、俺には関係ないしどうでもいい。俺は俺のやり方でこいつと居る。ただ、…嫌がる事すんのはどうなんだよ?」
「…ふっ。紀子ちゃんがこれを知ったら嫌だとは考えないのかよ?」