不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第37章 瀬川くんの決断
「状況も知らねえ事に口出すな。お前に何が分かんだよ」
「…………瀬川はずるいよ。紀子ちゃんと結婚して、ミライちゃんにも気に入られて…良い思いしてばっかじゃん」
「うまくいってないのは知ってるだろ。あいつとは、…別れる」
「はぁ?!この期に及んで何なんだよ。そう言っとけば良いと思ってんだろ?!嘘つくなよ」
そう言うとコウヘイくんも瀬川くんの胸ぐらを掴み、力を込めた2人の腕は震えた。
「……マジだから。」
瀬川くんは低いトーンで言った後、コウヘイくんから手を離した。
しばらく瀬川くんの胸ぐらを掴んでいたコウヘイくんはやがて手を離すと、「…っんなんだよ…」とうつむいて、無言で席に戻っていった。
私は服のボタンをはめようとし、震えておぼつかない手付きを見ると瀬川くんがしゃがんで手を貸してくれる。
「大丈夫か?」
「…うん、ありがとう…」
「…都合よく…とか、全く思ってないから」
「うん……」
瀬川くんは私の頭をがっしりと抱きしめ、はああ、と大きな息を吐き出した。
「戻ろう。そんで、もう店でよう。今日はもう…」
「ん、そうだね」
私たちが席へ戻るとコウヘイくんも含め4人はお喋りをしていて、平野が”おかえり”と言うように片手を上げて合図する。
「こいつ駅まで送るから俺もそのまま帰るわ」
コウヘイくんはすねるようにお酒を飲み、最後まで目を合わせてくれなかった。
心配そうにこちらを見るアンナに”ごめん”と合図し、私と瀬川くんは店を出た。
時刻は20時過ぎで、私たちはあてもなく少し歩いた。
ベンチに腰掛け、彼は私の手を握り、数秒見つめると携帯を取り出した。
「……?」
黙って見ているとどこかに電話をかけているようで、携帯を耳に当てた。
「……もしもし。俺。…ん、すぐだから。………」
誰と話しているか分からずに様子を伺っていると、瀬川くんはまた私を見つめながら言葉を吐いた。
「…ちゃんと会って話さないといけないと思ってた。だから何度も連絡したけど…だけど…もう待てない。……別れよう」