不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第38章 ウイスキーの香り
部屋に入ると、昔からそうである様子でベッドやテレビがあり、洋服が散らかっていた。
ペンや本が置かれたコタツテーブルに1人用の座椅子が向き合い、普段そこで彼が過ごしている姿が容易に想像できる。
私はなんとなく目のやり場に困りながら、そわそわと瀬川くんを待った。
やがて彼はお酒やおつまみを持って戻ってきた。
「なんかよそよそしいな(笑)」
「初めて来たんだもん、緊張する」
「まぁ、そっか(笑)」
私たちは隣同士で座り、ベッドに寄りかかりながら乾杯した。
私はここに来てよかったのだろうか…と冷静になりそうになる自分を見ないように、大きくチューハイを飲み込んだ。
「そうだ、ビンゴで当たったこれ(笑)」
瀬川くんはボストンバッグからウイスキーボンボンを取り出して笑う。
「うわぁ、おしゃれなパッケージ…!私、ウイスキーボンボンって初めて(笑)」
「俺は結構好き」
彼が包装を剥くと、黒く輝くチョコレートが顔を出す。
「「おお~~」」
2人で子供のように感心し、それが可笑しくてまた笑い合った。
瀬川くんがそれを私の口元まで運ぶと、私は少し口を開けた。
「あぁー…ん」
チョコレートと一緒に、瀬川くんの指先も入ってきた。
甘い顔で私を見つめ、「溶かしてみ」と言って優しく指を動かす。
その声に、指に、私はじわりと体温が上がるのを感じた。
口の中で少しずつチョコレートが溶けると、じゅわっとウイスキーが溢れた。
「んんっ…」
きついお酒の味に一瞬顔を歪ませると、瀬川くんは少し笑ってから私の口から指を引き抜こうとした。私は名残惜しくて、その指についたチョコレートを残らず舐め取った。
「…舌、みせて」
そう言われて私はチョコレートが付いたままの舌を見せると、今度は瀬川くんがそれを舐めるように舌を絡ませてくる。
「んっ…ん……っ」
前にもこんな事があった。
あの時はアイスクリームだったけれど、今日はお酒だ。
ぽかぽかと目の周りが熱くなる。
瀬川くんとのセックスを知ってしまった私は、そのキスだけで昇天しそうになってしまう。