不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第5章 空想の恋
紅茶に砂糖を入れてかき混ぜていた奈美がこっちを見る。
「グループチャットの?
ね、瀬川くんは居ないよね。」
「ほんとだね。でも同窓会には来るって言ってたし…もしかして夫婦で来るのかな…?」
”瀬川紀子”という文字を目にして何とも言えないショックを感じながら、昨夜の瀬川くんの声を思い出す。
「いやぁ…それが、さっきの良からぬ話っていうのがね。」
奈美が話し始めた。
私は、やっと聞ける…!と思いながら、ひとまず落ち着くために熱い紅茶を一口飲んだ。
「瀬川くんと紀子って、7年前くらいに結婚したよね?
それで、紀子は結婚前から子供がすごく欲しかったみたいなんだけど…なかなか出来なかったらしいの。」
「そ、そうなんだ…」
「うん。おそらく2〜3年は頑張ったみたいなんだけど駄目で。紀子が自暴自棄になって、瀬川くん大変だったみたい。」
「それは、瀬川くんが奈美の旦那さんに言ったの?」
「そう、同じ職場の頃にね。
そのちょっと後に、瀬川くんの赴任の話が出てさ。田舎の中学校に赴任してからもう2年以上が経つかなぁ」
「全然知らなかった。そんな事があったのね…。自暴自棄って、どんな?」
「初めはお酒ばっかり飲むようになって、家事も放置だったって言ってたけど…なんかもうすごく荒れたみたいだよ。瀬川くんもかなり疲弊してるって当時旦那が言ってた」
「瀬川くんも紀子も、大変だったんだね」
「うん…まぁみんな、色々とあるよね。もう三十路だし〜。」
話が少し明るいトーンに戻った頃、ピザが運ばれてきた。