不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第7章 視線
「…えっとね、こないだ電話で話したけど、フリーランスで仕事してるよ。わりと自由だけど、誰も管理してくれないから自分を律するのが大変だったりする」
苦笑いで答えると、
「…結婚、したんだよね?」
---…瀬川くんは知っていた。
隠すつもりだったわけではないけれど、どこかでしゅんとしてしまう自分がいた。なにを期待していたんだろう。自分が嫌になる。
「うん…5年くらい前にね。子供もいないし、旦那とは結構別行動…というか、お互い気楽にやってるかな」
旦那と仲が良くないことを強調するのは何だかいやらしいと思って、ところどころ訂正しながらぽつぽつと生活について話をした。
しばらくして、また少しの沈黙のあと
「俺のことは聞かないの?」
と、瀬川くんが少しいじわるに笑う。
「聞いたほうがいい?(笑)」
「いや、できれば聞かないで欲しい(笑)」
「なにそれ!ずる~!」
ひとしきり笑って、なるべくやわらかい雰囲気のまま私は言った。
「紀子と結婚したんだよね?」
「うん。なんか聞いてる?」
「うーん…まぁ少しはね。あっでも、探りを入れてたわけじゃないよ?!たまたま奈美の旦那さんが瀬川くんと同じ職場だったって言うから…それで……」
引かれてはいけないと、しどろもどろに否定する私とは裏腹に、瀬川くんはケラケラと明るく笑った。
「俺は、さぐってたけどね。お前のこと(笑)」
冗談っぽく言う瀬川くんに、え~そうなの、とヘラヘラ答えた。
でも、本当はすごく嬉しかった。
私も瀬川くんのことが気になって仕方なかったんだよと、言ってしまいたかった。