不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第7章 視線
---…アンナはさっきまで、ふらふらしながらも皆ときゃあきゃあ盛り上がっていた。
そのうちに眠気がやってきたのか、今はカウンターの椅子に座ったまま私の肩に寄り添うように眠っている。
「そろそろ飲み放題、投げ放題終了するのでラストオーダーあれば!」
と平野がみんなに声をかけると、どやどやと5~6人がカウンターにやって来る。
私も最後にジンリッキーを注文し、すやすやと眠っているアンナの隣で静かに今日のことを噛み締めていた。
ダーツから戻ってきた瀬川くんたちの取り巻きもカウンターの前に集まって談笑している。
ひときわ背が高い彼の横顔に、思わず見とれてしまう…。
瀬川くんが私の視線に気づいて目が合った。
急いで目を逸らした私は、絶対今の不自然だった…と、恥ずかしくなる。
瀬川くんは近づいてきて隣の椅子に腰掛けると、またほおずえをついて私を見る。
何も言わずに…。
「……なんでそんなに見るの?(笑)」
私が笑って言うと、瀬川くんは真面目な顔で
「お前が見てたから、俺もお前の顔見とこうと思って」
と言いながら、なおも真っ直ぐ私の目を見つめている。
お酒のせいかほんの少しだけまぶたが落ちているその目は、私の目の奥を射て離さない。
なにも言えず唇を噛みしめて見つめ返す私に、瀬川くんはニッといじわるな笑みを見せる。