不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第10章 電話の向こう
ビクッとして、心臓がドキドキと脈打つ。
通話ボタンを押すと、少しだけ疲れたような瀬川くんの声が聞こえる。
「もしもし?」
「うん、電話めずらしいね?お仕事お疲れ様」
私は長いこと自分の旦那にも言っていないセリフを投げかけた。
「突然かけてごめんな。大丈夫?」
「うん、今日は遅くまで1人だから…」
「…そっか。
打ち合わせの話、平野に聞いたよ。
普段ならぜっってぇ断ってるけど、今回はOKした(笑)」
「あはは、瀬川くんは幹事やるタイプじゃないもんね(笑)」
「絶対ないね。でOKしたらしたで、すげぇ驚かれてさ。
”ミライちゃんがいるからでしょう~”って、からかわれた」
瀬川くんが声を変えて平野のマネをする。
「私のこと?アハハ、平野は何を言ってるんだろうね」
ふっ…と瀬川くんも笑って、少し低い声に変わる。
「お前がいるからって理由しか無いけど」
私は年甲斐もなく、はにかんだ。
「…嬉しい。です…」
「なんで敬語なんだよ(笑)
でも、お前からメッセージ来てさ、来週会えるのかと期待しちゃったよ。」
「会えるよ!」
「打ち合わせで、だろ(笑)」
「うん…でも私は……」
「ん?」