不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第10章 電話の向こう
「うんとッ……私は早く瀬川くんに会いたかったから嬉しいよ」
また恥ずかしくて、早口の癖が出てしまった。
瀬川くんは電話の向こうで笑っている。
「なに?聞こえない。ゆっくり言って」
いじわるな瀬川くんの低い声に、また疼いてしまいそうになる。
「んもう…」
「お願い。もう一回言って。」
そんなふうにお願いされると断れなくなってしまう。
「…瀬川くんに、……会いたい…」
「……うん」
瀬川くんが優しい声で返事をすると、無言の時間が流れる。
「ねぇ!なんで黙るの、恥ずかしいじゃん!」
「ごめんごめん。
まぁ…2人で会ったら多分俺もうおかしくなっちゃうし、打ち合わせでって事になってお前は命拾いしたな(笑)」
「…え?」
「声聞けたしそろそろ切るよ。またメッセージして。」
「……まって!」
「ん?」
「なんだか…私ばっかり会いたいみたい。…私ばっかり言わされたぁ~!」
だだをこねると、瀬川くんは笑う。
「…会いたくてたまんないよ。おやすみな」
「うん…おやすみ。」
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瀬川くんの優しい声を思い返しながら、私は仕事部屋のソファで目を閉じた。