テキストサイズ

不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―

第10章 電話の向こう



翌朝、早くに目を覚まし寝室を確認しに行くとフミは眠っていた。

もうどれくらい「おやすみ」という言葉を交わしていないだろうか。




リビングに行くと昨日用意しておいた夕食はしっかりと食べられ、流しには汚れた食器が置かれている。いつもの事だ。




今日は久しぶりに、なにか凝った料理を作りたい気分。

専門学校に通い始める段階で上京し、一人暮らしだった私は料理が好きだった。



昨夜の瀬川くんの「またメッセージして」という言葉を真に受けて、私はトークルームをひらく。



[ おはよう!
昨日は電話ありがとう。
瀬川くん、好きな食べ物なーに?]


数秒で既読がついて、私は嬉しくなる。



[ おはよ。これから仕事。
何でいきなり好きな食べ物?(笑)
んー餃子とオムライスかな。お前は?]



餃子とオムライス…!
絶妙な組み合わせにクスッと笑ってしまう。


[ 今日は久しぶりにちゃんとしたお料理したくって。
では、餃子を作ります!
私は…焼き鳥とチーズが好き(笑)
お仕事がんばってね]



私も、”焼き鳥とチーズ”という変な組み合わせになった。
きっと瀬川くんは面白がっているだろうな。


[ 組み合わせがおかしいだろ(笑)
よし、今度食いに行こう。
オムライスはいつか俺が死ぬまでに作って。
行ってくる!]



私は瀬川くんにオムライスを作ることを妄想しながら、買い物に行く支度を始める。



------


お昼前、買い物も済ませて早速餃子づくりに取り掛かる。

フードプロセッサーでにんにくやニラをこまかくして挽き肉と混ぜ、皮に包むだけではある。

だけどこれが瀬川くんの好きな食べ物だと思うと、自然に力が入った。



すべて包み終えて一息つくと、メッセージに気付く。

平野からだ。



[ お疲れ様!
例のキャンプ打ち合わせだけど、来週の土曜に駅前の居酒屋でいいかな?
19時くらいからで(^^) ]


[ 了解だよ~!楽しみにしてるね!]



来週の土曜日が待ち遠しい。


不純な理由だけれど、”打ち合わせ”ではなく”瀬川くんと会える”が大きくなっていく。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ