不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第12章 関係のないクリスマス?
紗奈は妊娠7ヶ月を迎え、お腹は会うたびに大きくなる。
大好きなコーヒーも控え、赤ちゃんの誕生を待っている。
「春先には赤ちゃんも産まれるっていうのに、こんな話してごめん…」
「…あのね、言ってくれないで1人で悩まれるほうが嫌だよ。
でも、私こそごめん。
こんなとき、道を踏み外したら叱るべきが友達なのかもしれない。やめときなよって、きっと止めるべきなんだと思う…」
含みのある言い方に、なにも言わず次の言葉を待った。
「この子の父親、妻子があるの」
意を決したように紗奈が言う。
私はどこかで予想していたその事実に、落ち着いて頷いた。
「…ねぇ、紗奈こそ1人で悩まないでよ。
みんな何も言わないけど紗奈が大好きだし、心配なんだから…」
そう言うと紗奈はどんどんと涙ぐんで、おしぼりを顔に当ててうつむく。
やがて鼻をすする音がしたあと
「私ね……本当に好きだった。…一番の恋だった。あの人がいなくても…この子を産むんだって…ね…心に決めたの」
切れ切れになりながらも言葉を伝えようとするその姿に、私まで涙ぐみながら相槌を打つ。
「だけどね……ヒック…たまに、どうしようもなく、孤独を感じるの…ごめん…ミライィ…」
紗奈は昔から面倒見がよく情もあり、人と同じ気持ちになって一喜一憂してくれるような子だ。
芯が強く、いつも人の背中を押す側にいるタイプだった。
彼女の涙する姿を見るのはいつぶりだろう…。