不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第12章 関係のないクリスマス?
「紗奈、なんで謝るの。
私はちゃんと話してくれて安心してるよ。
…すごく浅はかかもしれないけれど、言ってもいいかな?」
紗奈はおしぼりに顔を当て、うつむいたまま頷く。
「その赤ちゃん、みんなで育てようね。
絶対絶対、たくさん協力するし。
特にアンナとか、子供大好きだからすっごく可愛がると思うよ?」
励ますように明るく言うと、やっと顔を上げた紗奈の目は真っ赤に充血していた。
---思い出した。
紗奈が涙していた記憶…それは、紗奈のお母さんが他界した時が最後だった。
私たちはまだ中学3年生で、その知らせを受けた私は転校先の地から母親に送ってもらい、お葬式に駆けつけたのだった。
母子家庭だった紗奈は、それから年の離れた未婚の姉と暮らしている。
「アンナは確かに、溺愛してくれそうな気がするよ(笑)」
すっかりいつもどおりの口調で話す紗奈。
ときおり鼻を拭きながら、先程の涙をなかった事にしたいように振る舞う彼女が痛ましくもある。
再びホットミルクを口にして、仕切り直すように
「で、瀬川とはどうするの?」
と問われる。
「どうするって…分からない…。
…実は同窓会のときだけじゃなくて、先週のキャンプの打ち合わせでも…」
「キスしたんだ?」
私が頷くと、
「可能性の話をするけどね…
もし紀子にバレるような事があったら、大事件だよ。
慰謝料の問題とか、裁判沙汰になる事だってある。
なんせ同級生同士だからどこから情報が漏れるかも分からないし、正直言って危なっかしい。
ミライだってフミさんがいるわけだから、バレたら色々とまずいじゃん?」
私は深く頷くのが精一杯だった。
「自分のことを棚の上の上にあげたこと言うけど、火遊びなら今のうちにやめといた方が良いと思う。
そうじゃないなら、瀬川とちゃんと話さないといけない事なんじゃない?」
私が深刻な表情で一点を見つめていると、
「ま、とにかく身体の関係は持たずに、ちょっと考えてみなよ。キャンプもあるしさ!それが終わったらしっかり答えが出せるといいね」
「うん…。」
私は結局、自分がこれからどうしたいかを少しも話せなかった。
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アップルでの会話を思い起こしていると、携帯が鳴った。