不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第3章 アンナ、おめでとう
馴染みの味であるランチを食べながら、アンナは嬉しそうに近況報告をしてくれた。
年下の彼とうまくいっていること、もうすぐ同棲を始めること、今とっても幸せなこと…——
「私、おじいちゃんが死んじゃってからすごく落ち込んだじゃん?仕事も休んじゃったりね。
でも最近は彼がね…食べなきゃダメだって、オムライスとか作ってくれるんだよぉ〜」
幸せそうなアンナを見ていると私も嬉しい。
今日は良い日だ。
「年明けには両方の親にも挨拶すんの!ねぇ、結婚ってどんなかんじ?やっぱ毎日ラブラブ?」
幸せ真っ只中のアンナは声がうわずっている。
しかし私自身の結婚生活をあらためて考えてみると、到底ラブラブなんかではない。
「いや…うちはラブラブではないけどね(笑)それにしても彼氏くん、アンナにゾッコンなんだね〜!うらやましい〜〜」
「でもさ、私は30だけど彼は若いから…いつまでこの仲が続くのか不安もいっぱいだよ。やっぱり若い子の方がいい〜とか言われたら私また痩せちまうよ…!」
「だめ。それ以上は痩せるでない」
「アハハ!でもしっかり頑張るつもりだよ。
ミライはラブラブじゃないのかぁ〜。そういえばミライのおのろけ話とか聞いたことないな。なんかないの?」
「おい、雑な質問だな(笑)
まぁウチは結婚前の付き合いも長かったしね。
仲悪いわけではないけど…仲良くもないっていうか…離婚とかは全然ないんだけど……う〜ん。。。」
歯切れの悪い私の言葉に、アンナは紅茶をすすりながら真顔で
「セックスは?」
と聞く。
突然の質問と、その真剣さに私は一瞬吹き出した。
けれどアンナは笑わない。
「……セックスは?って、してるかしてないかって事?」
つい、当然のような確認をしてしまう。
アンナはティーカップを持ったまま頷く。
「………してないね」
なんなんだこれは、と思いつつ答えると、アンナは空中を見つめながらつぶやく。
「みんなそうなっていくもんなのかなぁ…」