不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第16章 埋められない溝
近くにいた瀬川くんがさりげなく近づいてきて、「また連絡する」と小さな声で私に言う。「うん…!」私が答えると瀬川くんも車に乗り込んでいった。
サッちゃん親子と紗奈を乗せて、私はそっとアクセルを踏む。
…考えてみれば私はこの1ヶ月と少しの期間で、2度も3度も瀬川くんとキスをし、すっかり泥沼に嵌っているように思える。お互いに伴侶がいてもなお、歯止めが効かなくなっている自分たちが怖い。
これからどうなっていくんだろう。そもそも、この関係に答えを出す必要はあるのだろうか。…分からない。家庭を壊す気などなくても、実際に私たちは…恋人同士のように抱き合い、キスをしている。
後部座席でシュウトとサッちゃんが眠っているのを確認する。
「ねぇ、紗奈…。私、答えが出せるか分からない…」
紗奈はとても長く感じる沈黙の後で
「…無理に答えを出そうとしなくても、時間は進んでいくからね。良くも悪くも、いつか答えは出る。…と思う。誰かじゃなくて、ミライはどうしたいの?」
とゆっくり答える。
「私は……---」