不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第19章 覚悟
……鼓動がうるさい。
しばらく呼び出し音が鳴り続け、あきらめようと思った頃
「…もしもし」
瀬川くんのかすれた声が聞こえる。
「ご、ごめんっ…!寝てた?あの…イベントお疲れ様。さっき校長先生から電話もらって」
「あぁ、本当にありがとな…うまくいったんだけど…なかなか連絡できなくて…報告できずにいた。ごめん…。」
途切れ途切れに話す瀬川くんは、なんだか苦しそうだ。
「ううん、気にしないで。校長先生が、瀬川くんすごく頑張ったから疲れてるだろうって…」
「あはは。疲れてるっていうか…はぁっ…身体が動かねえ(笑)今日は校長の厚意で休みもらったから…朝からずっと横になってる」
なんだか違和感のある息遣いに、
「熱があるの?」
と聞くと彼は「測ってないけど…多分大丈夫」と言って静かに笑う。
何も出来ない自分がもどかしい。
「私に、なにか出来ることない…?」
「…顔見れたら治る。」
「えっ?」
「ハハ、ごめん…冗談」
「私…瀬川くんの家に行っちゃ駄目かな?…」
「いや、冗談だって」
「いきなりこんなこと言っても迷惑だよね」
「そうじゃなくて、風邪がうつるだろ」
会いたい…。
瀬川くんに会いたいよ…
「私は構わない。瀬川くんに会いたいし看病した…
「お前、自分の言ってること分かってる?男の家に1人で来るって事はな・・・!」
彼からの拒絶はもう揺るがないものなのかもしれない。
私はもう…この気持ちのやり場がなくて、壊れてしまいそうだ。
「瀬川くんだから言ってるんだよ…?だけど……図々しかった。ごめん。」
つい涙ぐんで、鼻声になってしまう。
私がズッと鼻をすすると、電話の向こうで瀬川くんは黙ったまま…きっと困っている。なにか言わないと…
「…なら、来いよ。」
「え…?」