不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第19章 覚悟
「…」
少しの間無言で見つめ合い、促されて玄関に入ると瀬川くんはふらりとよろついて私にもたれかかる。
「瀬川くん…っ?!大丈夫?熱があるみたい。とりあえず横に…」
「はぁ…ごめん……ありがと…」
かなりの熱があるようだし、呼吸も荒い。
なんとか奥の部屋に向かうと、暗くシーン…と静まった部屋に今まで寝ていたであろう布団がめくれている。
私は瀬川くんを横にならせ、おかゆを作りにキッチンへ行く。
生姜と大根の葉をたっぷり使ったおかゆは、私が子供の頃によく母が作ってくれた万能薬だ。持参した小さな1人用の土鍋にグツグツと蒸気が立ち上がり、室内にダシの良い香りが充満する。
「瀬川くん…?起きてる?」
そっと声をかける。
「うん、…なんかいい匂いがする…」
返事にホッとしておかゆを運ぶと、瀬川くんは重そうに上体を持ち上げる。
「食べられそう?ほかにも色々あるから、栄養とってね」
私が袋からガサガサとスポーツドリンクやゼリー、ヨーグルト、りんごなどを取り出していると、「すげえな」と言ってクスッと笑う。
クッションに寄りかかった瀬川くんに、フーフーと冷ましたおかゆを差し出すと、パクっと食べて飲み込む。
「ん…うまい。」
「良かった、これね…昔、私が風邪を引くとお母さんがよく作ってくれたの。きっとすぐ良くなるよ」