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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第8章 二人目のお面ウォーカー

漠間は、計算しながらホワイトボードにマ-カーで書いていく。

「あの博士……」

「なんだい三島くん」

「それは、油性ペンです」

「…………」



夕子の車が、アパートの前で止まった。

「田中さん、ここでいいですか?」

「う~い、おぉ……ぎに」

わずか五分ほどの移動だったが、良夫の体にはすっかり酒がまわっていた。

「ちょっと、田中さん、お家、つきましたよ!」

「zzzz」

「え、嘘でしょう!?」

良夫は、居酒屋である程度まで飲むと、歩いて帰るまでの体内時計で無意識に酔いを抑えておけるが、予期せぬ夕子の取材により時間が狂い、泥酔モードに突入してしまっていた。

「えぇーっ、ちょっと勘弁してよ……」

夕子は、車から降り助手席に回り、シートベルトを外すと、良夫の体を引きずり出した。

「ちょっと田中さん、しっかりして下さい。ここで寝たら凍死しますよ」

良夫は、返事をするように、鼻からグゥ~と鳴らした。

「んもぅ……」

夕子は車を施錠し、良夫の腕を肩に回して立たせる。

「うわ……重いし臭いし……」

ケアしてもしきれない良夫の加齢臭を浴び、夕子は力任せに階段の前まで連れて行く。

「え、担いで階段を上がるの無料っしょ」

二階を見上げると、良夫の部屋の小窓から明かりが見える。

夕子は、誰かいるのかと二階へ上がり、良夫の部屋の前まできた。

中から人の気配がする。

家族の方なのか、それとも空き巣か……、

夕子は、思い切ってドアをノックした。

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