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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第8章 二人目のお面ウォーカー

そのお面を、鈴に渡す前に、ふと思いとどまった。

そして、階段を上がり、鈴の前に立つと、手にしたお面を示し、

「あの、おばさん。私、今から田中さんにお面を届けてきます」と言った。

「えっ? そんなお面、なんに使うんだい?」

「これを使うと、田中さんが強くなるんです。ごめんなさい、行ってきます」

そう言い残すと、夕子は走るように階段を下りていった。

鈴は、夕子の後ろ姿を見送ると、やれやれといった様子で、良夫の部屋の方へ、体を向けた。

すると、階段の下から、

「待って下さい、奥さん」と声がした。

鈴が立ち止まって振り向くと、息を切らしながら階段を上がる、漠間の姿が見えた。

「先ほど私どもの製作した清掃作業用ロボットが、大変なご迷惑をかけてしまいました。さぞかし驚かれたことでしょう。こんなことしか出来ませんが、御勘弁を……」と漠間はホットの缶コーヒーを三本差し出した。

鈴は遠慮することなく、「あらま、いただけるの? ありがとう」と笑顔を見せ、素直に受け取った。

「いやいや、大変申し訳ないことをいたしました。私として……」

漠間は深く頭を下げた後に、鈴の顔を正直から直視したとたん、全身に電流が走るほどの衝撃を受けた。

言葉に詰まり、体が硬直する。

「どうかされましたか?」と鈴が声をかけると、漠間は目をそらす。

「あ、いや……別に……」

漠間は、白衣のポケットからカードケースを出し、手書きの名刺を一枚出した。

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