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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第2章 ええーっ!

座る体勢を変えると共に、軽く組んでいた腕が、胸元まであがり、しっかりと組まれる。

お面はさらに押し上げられ、ついには、眠る良夫の顔を受け入れるかのように前方に傾くまで露出。

さらに、胸元に組んだ腕が、お面の支えになり落ちるのを防いでいた。

良夫は、完全に睡眠に入ったわけではない。ただ、うとうととしているだけで、次の駅に着くのをただ待っているだけだ。

電車が動き出すと、さらに頭が揺れる。


お面は、見事に良夫の顔にはまった。

「ん?」

さすがに、この異変には気が付いたようで、指の先で顔の周辺を探ってみる。

「っ!」

声には出してないものの、ちょっと待て、嘘だろと、小刻みなパニックに陥っていた。

お面は先ほどと同じように、ピッタリと貼り付いている。これは、顔を上げるわけにはいかない。

(またかよ……どうしよう……)

少し顔を上げ、帽子を深めに被る。そして、サングラスをかけようと胸元を探る。

「え?」

その、サングラスがない。

(あ、まさか、さっき外でお面がとれた時に……)

落としたのかもしれない。

それは、昔、テーマパークのキャラクターグッズの土産物屋で買った、お面の目元もすっぽり隠れるほどの、大きなサングラスだ。

普通にかけて歩いているなら、目立ちたがりやの痛いやつにしか見えないが、良夫にとっては大事なカムフラージュアイテムの一つだ。

それが無くても、今の良夫は痛いやつにしか見えない。

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