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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第8章 二人目のお面ウォーカー

それを聞いて夕子は、自分の口に手を当てる。なぜなら、その麻薬組織に心当たりがあったからだ。

「麻薬組織……それ、以前に私も取材してました。でも、河原組の配下にあったなんて……」

「ケンカを生業としている暴力団とはいえ、プロ格闘家とやれば子供と同じ。まあ、武器さえ使わなければ……の話だがな」と二郎は笑う。

「どうして、そんな麻薬組織に?」

それを聞かれると、二郎の表情が曇りだした。

「俺の彼女が、やつらに麻薬漬けにされ、逮捕された挙げ句、出所したのち行方不明となったんだ」

夕子は言葉を失い、怖々とした目で二郎を見た。

二郎は続ける。

「彼女の父親は、元宗田組の幹部で、足を洗ってから、事業主となるため組の配下にある闇金融に金を借りていた。おそらく馴染みのところだったことと、また円満退社のようなかたちで組を出たことから、相談しやすかったんだろう。だが、馴染みと言えど、そこはヤクザの闇金。膨大な利息を重ね、父親に無理な返済を求めた」

二郎は、一度大きなため息をついた。

夕子は、ただ黙って聞いていた。

自分の彼女の不幸を話すのは、二郎にとっても気が重いことだろうが、黙って聞いてくれる夕子に対し、自然と口が開く。

「彼女は、母親と暮らしていたが、母親はすでに父親と離婚していたんだ。これは、父親が家族に火の粉が散らないようにと、娘が働けるようになってから自分から離婚をしたんだ」

「それは、誰から聞いたんですか?」と夕子は、口を開く。

「俺が婚約しようと、彼女に言った時、隠していたすべてを話してくれたんだ」

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