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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第8章 二人目のお面ウォーカー

二郎の拳に、力が入っていることは、夕子にも見て取れた。

それは、暴力団組織に対する怒りなのか、それとも彼女を守りきれなかった自分への憤りなのか、その答えは、すぐに二郎の口から発せられた。

「だが、それから数年後、その父親が行方不明になった。宗田組は借金のカタに、彼女を組事務所が経営する風俗まがいのBARに入れたんだ」

「そんな……もう、親は離婚して娘さんには関係のない話なんじゃないの?」

「ヤクザにそんなもの通用するもんか。だから、俺はギャラの低いプロレスを辞めて、総合格闘技に転身し、ギャラの半分を彼女の父親の借金にあてた。だが、そんなもの利息の一部にしかならず、なかなか元金が減らねぇ。少しでも借金を減らすため、彼女は自身の仕事とBARのかけ持ちで、疲労が重なり、体調を崩すようになった」

「まさかそれで、体がスッキリするからと組員が彼女に……」

「ヤクをすすめたんだ……もっと俺が力になっていれば……」

二郎の話は、止まらなかった。深夜のBARからの帰り道、彼女は警察に様子がおかしいと職務質問を受け、署内で尿検査をおこなったところ、薬物反応が見付かり、即逮捕された。

二郎は彼女が逮捕されるまで、違法薬物を使用していることは、知らなかった。

「都合がいいことに、格闘家の山田二郎が彼氏だってことは、ヤクザには知られていない。だから宗田組幹部から一人一人話を聞いて、大阪の河原組が行方不明に関与してることを聞いた」

「それで大阪に来たんですね」

「ああ、それと大阪に来た理由は、もう一つある」

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