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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第9章 勝重からのプレゼント

「それでいいんですか?」

「あぁ、拾った物に値段をつけて売るわけにもいかんからね」

「拾った物だったら、警察に届けなくていいんですか?」勝重の言う通りだ。

だが店主は、立ち上がってお面を取ると、その裏側を見せ、

「届けて三ヶ月して、ここに戻ってきた。貰ってもしょうがないんじゃよ」

勝重は、心の中で、

(ちょっと前に、店の前で拾ったとか言ってなかった? 結局、届けてないんだろ)

しかし、背に腹はかえられぬ。勝重は店にある、千円ほどの七福神、寿老人の木彫り像を買って、お面をいただいた。

「ちょっと待ちなさい」と店主はレジの台の下から、ある物を出した。

それは、銀色のブレスレットのようなリング状のもので、全体に複雑な幾何学模様のようなものが、彫り込まれていた。

「これが、お面に引っ掛かって一緒に落ちていた。これも持っていってくんな」

「いいんですか?」

「ああ、処分に困ってたんだ。持ってってくれたら助かるよ」

「あ、ありがとうございます」

勝重は、素直に頂戴した。


……と、そんなことがあった。

つまり、良夫が手にしたのは、新婚旅行のお土産ではなく、民芸品屋で店主が拾った物を貰ったものだった。





※遺失物等横領罪(刑法254条)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(拾得物含む)

……とあります。落ちていたものは、届けましょう。


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