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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

勝重は、そのことだけを告げると、おっさん臭の溢れるロッカールームから足早に去っていった。

良夫は絞ったタオルで体を拭くと、自分のロッカーを開け、乾いたバスタオルを引っ張り出し、もう一度念入りに拭いた。

浴室から長谷川が、

「おい、戸を閉めてえな。しずくが散っているところを課長に見られたがな」

「それをするからや。てか、あいつ俺のマグナムの銃口を、同情するような目で見てたぞ」

「水鉄砲の吹き出し口の間違いやろ。てか、あんたの知り合いか誰か来てるんか? まさか、前の女か?」

「ちゃうちゃう、男やて。まあ、誰が来てるか予想はつくけど」と良夫は、鏡を見ながらドライヤーで髪を乾かす。

「なんや男かぁ。男相手には、ライフルにはならんなぁ」

「そんな曲がったライフル、役には立たんやろ」

「まったくや。まあ、的になる相手もないけどな。ほんなら閉めるで」

長谷川は笑いながら、親父トークと一緒に浴室の扉を閉めた。

良夫は、服を着込み、左腕に銀のリングをはめると、「お疲れさーん」とロッカールームを出ていった。

会社の外に出ると、黒光りする大きな車が一台、存在感を押し出すように停まっていた。

「ボルボやん……金持ちの車やん」と良夫は、イメージだけで言った。

運転席からサングラスをかけた男性が、顔を出す。

良夫は、一度立ち止まるが、そのまま素通りしていった。

「ちょっとちょっと、田中さーん! その大阪のノリはあんまりでしょ」

相手は、山田二郎だった。

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