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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

良夫は、勘弁してくれと言わんばかりに、思いっきり表情をしかめる。

「ええ~、おたく誰ですか?」

なぜか初対面を演じるが、演技力の無い良夫のフリに、二郎は苦笑いを見せるしかなかった。

「いやいや、今朝会ったじゃないですかぁ~。せっかくだから迎えにきたんですよ」

「なんで終わる時間を知ってるのさぁ……てか、残業になってたかもしれないんだよ」

「あの記者の女性に聞いたら、知ってましたよ。それと、プレゼントがあります」

そう言って、二郎は手招きをする。

「プレゼント? なに?」

良夫が車の後部座席をのぞき込む。

「あっ!」

本日発売の、プラモデルの新作が4箱積まれていた。

二郎は笑った。

「これ、好きなんでしょ? 付き合っていただけるお礼にプレゼントしますよ」

「えっ、えっ、えっ、なんで知ってんの!? 全部今日出たやつばっかじゃん」

「それも記者の女性から聞きました。きっと、これが欲しいはずだから、(餌に)買っておいたほうがいいって。僕もミニ四駆世代でした。小さい頃、よく作って遊びましたよ。懐かしいですね」

「俺は昔貧乏で、こんなの買ってもらえなくてさ、その反動で、こんなおっさんになってハマっちゃってさぁ。いいの、貰って」

「もちろん、その代わり、相談乗ってくださいよ」

「もちろんやがな~」

良夫は、笑顔で車の助手席に乗り込んだ。

車は動き出し、車道に出る。

良夫は落ち着かないのか、車内をキョロキョロと見回す。

「この車、高いんじゃない? やっぱり格闘家て、儲かるんやなぁ」

「この車はレンタルです」

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